ナサコア株式会社:

PTC面状ヒーター

新しい風が吹いてきた ....そのⅡ
床暖房専用PTC 面状ヒーター
―安全・快適に活用するために―
 
   もし、周囲温度80℃で通電をし続けると...?
ptc
(H19年7月発行)
    こちらの内容は日本エレクトロヒートセンター発行「エレクトロヒート」№154を参照の上編集しております。
 

まえがき

新しい風が吹いてきた・・・・そのⅡ(2007年7月)は"そのⅠ"(2005年5月),産業と電 気(2007年11月)及び電気設備学会大会発表(2007年9月広島)により業界に相当なインパ クトを与えたようである。そこで今回問題が何であるかを明確にするため表紙を変更し、 関係者にミサトの先進性を理解いただき、床暖房に適用可能なPTC発熱素子について 根本的な検討を期待したい。さらに、増刷に当たって気付いたことは次の通りである。
 
*著者は、職務上、各地で床暖房の採用や決定に与かる人たちに、電気がガスより保守、管理及び寿命の点、さらには、ランニングコストの面ではるかに優れていることをデータにより説明してきた。
 
*それらのデータはミサトの床暖房用ヒータープラヒートに関するものであり、床暖房に適した温度範囲の優れたPTC特性を有し、その特性により、安全性は他社にはまねの出来ない製品である。さらに潜熱蓄熱材ヒートバンクとの組合せによる電気蓄熱式床暖房はガス温水式床暖房に比してランニングコストについては何分の1で済むのである。
 
*他社の電気床暖房製品の中には電極線が薄過ぎるなど構造上危険であると思われる構造になっていることなど著者の長年の経験から判断して警告をし、解説をしているにもかかわらず採用されたものもあり、現在も状況は同じであるのは問題であると考えている。
 
*最近の電気床暖房の事故の報道や報告を分析してみると、著者の危惧が現実になっており、著者の判断に誤りはなかったのであった。
 
*電気床暖房の発熱部が「線から面」へと大きな技術革新を成して、ガス温水式床暖房よりはるかに優れていることがようやく知られるようになった矢先、事故のためにそれら有利さが総て帳消しになって、業界全体の信用が失墜しかねない事態にあるように感じている。
 
このように、一通りの説明や解説では理解が徹底しないのは残念なことである。
そのため、

*電気床暖房の安全性の確認方法に的を絞り、解説する必要性を強く感じて、この冊子を広く配布することにした。
 
*特にフイルムヒーターを使用する際には、本文中(5頁)にあるように80℃の周囲温度での試験をクリアーしているか、が問題であり、そうでなければ、云わば「時限発火装置」になりかねないことに留意が必要である。PTCという言葉が誤用されているものもあり、憂慮している。
 
*PTC面状ヒーターの必須条件は、床暖房に適した温度範囲で有効、適切であり、長時間連続通電においても安定して確実なPTC効果を有することである。よって、"70℃以上で使用してはいけない"などの注意書きがしてあるものは、実効性がなく安全性に対する偽装とみなされたり、PL法に対する言い逃れと言われても致し方ないと思われる。
 
*電気床暖房に関係する人たちに是非ご一読を願いたい。製品の設計に役立てていただく一方、施工に当たる人たちが、使用するヒーターの特性を良く知り、熱的、空間的に余裕があるように施工の際に配慮がなされれば事故の確率が減ると考えるからである。
 
追伸:この冊子はVOCについての検討を省略しており、さらにやや専門的な扱いの部分があるので、より分かり易く解説した冊子を準備中であり、近々発行するので、ご希望の向きは弊社にご一報いただければ配布する予定である。
 

目次

はじめに
 
第1章 床暖房用PTC面状発熱素子の設計条件
  1.1 安全性 (時代の流れを想定した安全性)
  1.2 耐久性 (建物と同程度の耐久性)
  1.3 適応性 (設備条件や家具の配置に対する適応性)
  1.4 快適性 (経済的快適性)
 
第2章 床暖房用PTC発熱素子(プラヒート)の製法と電気的特性
    (導電性ポリマーを成型した熱半導体)
  2.1 面状発熱体プラヒートの製造方法
  2.2 プラヒートの正温度特性と抵抗値
  2.3 経時変化の加速試験(1時間)
  2.4 過電圧、断熱条件下における終末予想試験
  2.5 トレーサビリティーについて
 
第3章 給電線と電極線の設計
  3.1 給電線と電極線
  3.2 特性長、固有インピーダンスの実際例
  3.3 加熱電力(消費電力)について
  3.4 測定
  3.5 電極線のRによる発熱について
 
第4章 面状発熱素子の応用
  4.1 床暖房への応用
  4.2 屋根の融雪への応用
  4.3 遠赤外線放射の応用
 
おわりに
参考文献
参考資料
 
 

第1章 床暖房用PTC面状発熱素子の設計条件

新しい風が吹いてきた....そのⅡ
床暖房専用
PTC 面状ヒーター
-安全・快適に活用するために-

清川晋 (きよかわ しん)ミサト㈱中央研究所 所長 工学博士
廣瀬治男 (ひろせ はるお)ミサト㈱中央研究所 主席研究員 工学博士  

 

 

はじめに

従来技術において発熱体は主としてニクロム線に代表されるように線を基本として広く普及してきた。
この場合、温度制御には屋外の融雪用のロードヒーターを始めとし、温度を一点ないし数点で検知・制御するか、電気毛布の発熱線のように線に沿うようなセンサーを発熱線に平行させ、高温部分を検出して対応してきた。
近年、屋内の床暖房用としてPTC特性(自己温度制御機能)の面状発熱体(主としてカーボン系)が開発され、製品として続々と登場してきた。さらにユーザー、施工業者、デベロッパーからの要求に沿う発熱素子として、安全性への配慮を欠くと思われる電極線まで薄い商品(フイルムヒーター)が多く見受けられ、昨今、新聞報道注1)にもあるように、トラブルが続発している状態が現状である。
この様な状況を改善するため、電気床暖房工業会は、電力各社の協力の下に、平成17年度2月、自己過熱抑制PTC発熱素子利用施設型電気床暖房基準を"自主基準"1)として定めた(以後"自主基準"と呼ぶ)。
このことは、時宜を得た真に重要なことと考える。しかしながら、対象としている製品は、最初の設計に少し無理があると、数年あるいは数10年先に発火して終わる、いわば'時限発火装置'になりかねないと危惧を感じる者の一人である。すなわち、この"自主基準"をもう一歩進めた、過酷な雰囲気でのPTC発熱体の振る舞いにも注意を払う必要性を指摘したい。
  長年この種の暖房用発熱素子の開発、応用に携わってきた著者の経験から、床暖房用PTC面状発熱素子に求められるのは安全性、耐久性、適応性、快適性として集約されるように思われる。本冊子では、これらについて簡単に触れ、火急の問題となっている安全性に特に的を絞り述べる。中でも、トラブルの内容から、素子の給電線、発熱体の電極(線)の考え方、PTC発熱体に求められる温度特性について解説する。最後に、珍しい応用について紹介する。
 

1.床暖房用PTC面状発熱素子の設計条件

床暖房を使用する側の住環境がこの10年程の間に高気密高断熱と大きく変わり、高温による加熱でなくとも人間に快適な暖房環境を提供できるようになったことは安全面で極めて有効な、有用な変化と捉えることが必要である。反対に、VOC(揮発性有機化学物質)はもとより、一酸化炭素中毒等の家屋内の事故については20年前には極めて少なかったが、昨今は頻発する事態となり、安全性・環境面において心ならずも製造時には予期しなかったメーカー責任が問われる時代となった。著者は電気を利用する限りガスに対する配慮を特に必要とはしない有利さを強調したい。そこで、床暖房用PTC発熱素子の設計、施工に際しては次の項目に留意しておく必要があると考えている。
 
1.1 「安全性」(時代の流れを想定した安全性) 1)事故により、或いは最終的に寿命が尽きたとき、通電せず、安全サイド(フェイルセーフ)に破壊すること。
 
2)給電線と電極線は全体の電流容量を充分に許容でき、過熱しないこと。
 
3)電磁波の発生が人体に影響の無いレベル以下であること。
 
4)設置施設においてVOCを極力発生させない動作温度であること(40℃を超すと急激に発生することが知られている)。
 
1.2 「耐久性」(建物と同程度の耐久性)
1)望ましくは建物と同等、少なくとも30年以上の実働性と耐久性を有すること。
 
2)製造者としては過去に遡り、経年変化等劣化に対してトレーサビリティーが保証出来ること。
1.3 「適応性」(設備条件や家具の配置に対する適応性)
1)受電設備が過大にならない温度抵抗特性(PTC効果)であること。
 
2)センサーによるだけではカバーしきれない直上の家具等の配置に対しても、適切なPTC効果により、過熱しないこと。
 
1.4 「快適性」(経済的快適性)
1)年間を通じ(夏も冬も)、24時間一定温度を維持し、床表面と室内空間の温度差が少なく、無垢床材等にも影響を与えないこと。
 
2)潜熱蓄熱材との併用により快適性・経済性に優れ、夜間電力を家庭用、業務用を問わず最大限に活用できること。
 
以上の4つは、設計上考慮するべき基本的条件であると考える必要がある。
以下、問題が多発している給電線と電極線およびPTC特性に的を絞り、安全性について解説した。他にも関連していると想定される導電性ポリマーの製造時における溶剤の経時変化に対する影響など、問題を内包しているが、それについては他の機会に譲りたい。
 

第2章 床暖房用PTC発熱素子(プラヒート)の製法と電気的特性

(導電性ポリマーを成型した熱半導体)
 
2.1 面状発熱体プラヒートの製造方法
 図1に示す面状発熱体プラヒート(熱半導体)の製造方法では基本となる樹脂は溶剤を一切使用せず、単に導電性原料を適量加えるのみで行うのが特徴である。
図1には示されていないが最終工程として、エージングにより、発熱体の安定化を図っている。電極線は導電性ポリマーと完全一体化をはかり、特に発熱部との接触に留意工夫をしている。
この製法は基本的には開発当初に採用した方法を堅持しており、研究により改良を行った結果、熱半導体★として完成したものである。
 
製造工程の概略を以下に示す。
(プラヒート原料導電性ポリマー製造工程)
プラヒート
図1 プラヒート(熱半導体)の製造工程
 
★ 半導体という用語には例えば不純物半導体、磁性半導体、有機半導体等各種あるが、何れも温度に対し負の温度抵抗特性を有するのに対し、プラヒートは温度抵抗特性が明確に正特性を示す(図2)、これを熱半導体と定義する。
 
プラヒート
図2 プラヒートの温度と抵抗値の関係
 
2.2 プラヒートの正温度特性と抵抗値
図2に示すPTC(正温度特性:温度が上がると抵抗が増加する)特性はプラヒート(熱半導体)の重要な特性であり、それが発現する根拠は導通がパーコレーションに拠っているためであると考えられており、素子の熱膨張による導電性粒子間隔の変化によって起こる。
この変化特性すなわちPTC特性は、1.3で述べたように、使用目的に適合した特性を選択することで受電設備が過大にならないように出来ることが望ましい。"自主基準"にはPTC発熱抵抗体を次のように定義している。
「PTC発熱抵抗体は正の温度係数を持つ半導電性抵抗体で、ある温度を超えると温度係数が急に増加し、通電電流を抑制する特性を持つ抵抗体である」
著者にはこの定義は安全性を保証するには曖昧さが残っていると思われる。
 
ptc
 
2.3 経時変化の加速試験(1時間)
図3にプラヒートと他社製の発熱素子を周囲温度80℃の加熱状態の下に通電し、その温度上昇の様子を示す。プラヒートは適切なPTC特性(この温度の下では電流が殆んど流れない)により、電力の消費による温度上昇は極めて少ないことが分かる。比較のため、入手出来た他社製の素子はPTC効果が適当でなく、このような条件下では温度が必要以上に上昇し、ついには燃焼に至り破壊すると予測される。
"自主基準"では、PTC効果を20℃の雰囲気でヒーターを断熱することにより確認している。しかしながら、上記の試験は、80℃のより過酷な雰囲気で実施した加速試験であり、同時にPTC効果の適切性を判断する試験となっている。
床暖房用面状発熱素子としては建物と一体化し、各種の制御装置と共に施工されているが、あくまでも全面隈無くPTCに拠って制御が出来ることが前提と考える必要がある。それには床暖房の使用温度範囲を超えた時、抵抗値が増加する程度は自主基準にいう急激では対応できなく、一気に通電が止む必要がある。つまり、そのようなPTC効果を発現する素子であることが必要と考える。
 
   周囲温度80℃に設定1時間通電中の各ヒーターの温度変化 ptc
 
ptc
 
ptc
 
図4 終末を予想するための過電圧試験の結果
 
2.4 過電圧、断熱条件下における終末予想試験
図4は、"自主基準"では定格100V用に200V、200V用に300Vの通電をし、試験を要求しているが、ここでは安全性を保証するため、現実にはありえないが定格の5倍の500Vの過電圧による終末予想試験を行った結果の報告を転載したものである。試験は試料を盤上に配置し、断熱状態にして、周囲温度は室温として行ったものである。図には比較のため他社製品も示してある。写真で判るようにプラヒートは発熱部中心において温度上昇により、自ら破壊し、すなわち溶断により断裂して、その機能を停止し、その後の通電が停止したため、燃焼に至らず、フェイル セーフであることを示している。
他社試料はいずれも燃焼するに至っている。
 
プラヒートの場合、中心部が断裂(溶断)するのは横方向の熱伝導条件から中央部が最も高温になる上、発熱部の両端には電極線があり、それがある程度のヒートシンクの役割をなしているものと考えられる。プラヒートはこの試験により、フェイルセーフが実証されていると考えている。このように最終的に通電せずに機能停止することが看過できない条件の一つであると考える。
 
ptc
 
図5 プラヒートは創業(1962年)以来の製造時の試験片が保管されている
 
2.5 トレーサビリティーについて
住環境で使用される床暖房ヒーターとしては、建物と同等又は、30年以上の耐久性が要求され、かつ安全性を確保するため設置発熱体その物の過去に遡ってトレーサビリティーを確保する事が必要である。
プラヒートは弊社創業以来試験片を保管(図5)し、追跡調査の必要あるときに対応可能な態勢にある。
このような態勢はこの種業界においては希有な例であると考えている。
 

第3章 給電線と電極線の設計

3.1 給電線と電極線
発熱体全体に電力を供給する給電線と発熱抵抗体に電力を供給する電極線があり、その許容電流と接続方法等に多数の事故の原因があり、その適正化が事故の防止上重要であると考えている。
以下は家庭用電気機械器具に使用される給電線(接続電線)と一般的なキャブタイヤコード電線の許容電流容量を示す。また、電極線については"自主基準"より抜粋して概説する。
給電線(接続電線)は内線規定JEAC8001-20053)(日本電気協会発行)の電気技術規程使用設備編の1編総則 3章保安原則 1335節電線 1335-2コードにより定められている。
1335-2の規定内容は電気設備に関する技術基準を定める省令、資源エネルギー庁公益事業部編4)に示すものであり、その解釈において以下の通り定められている。
対象となるコードは、定格電圧100V以上600V以下のものに限られる。
現在一般に使用されているコードにはゴムコード、ビニルコード、ゴムキャブタイヤコード、ビニルキャブタイヤコード、金糸コードがある。コードのうちビニルコードおよびビニルキャブタイヤコードは放電燈、ラジオ、扇風機、電気スタンド等の電気を熱として利用しない電気機械器具および比較的温度の低い保温用電熱器(電熱器と電線との接続部の温度が80℃以下であって、かつ電熱器の外面の温度が100℃を超えるおそれがないものに限る)等に使用することが出来る。なおコードの太さは断面積0.75以上のものに限られるとしている。
また、コードの電流値については同内線規程の第1編総則の3章 1340-2コードなどの許容電流の1340-5表に示す値となっている。
 
コードおよび蛍光灯用電線の許容電流
 
家庭用電気機械器具の電気掃除機、電気冷蔵庫、電気洗濯機等は消費電力から適合した、断面積を持つキャブタイヤコード等が給電線として取り付けられている。
 
(例)
・電気洗濯機(ES-L42型)
300W 100V 3.0A 0.75平方ミリメートル
小判コード
・電気掃除機(SV1-1型)
900W 100V 9.0A 1.25平方ミリメートル
キャブタイヤコード
・電気冷蔵庫(GR-W220型)
235W 100V 2.35A 2.0平方ミリメートル
平行コード
 
電極線については"自主基準"として以下の通り定められている。
構造および材料で、(P4)
・7.3電極 電極には発熱素子の形状に最も適した方法を選択し、使用中に発熱体の接触不良を起こさないものとする。
・電極に使用する材料には導電性塗料や鍍金を施した銅泊、軟銅撚線、編組線等を使用すること。また、テープなどには無酸素銅を使用するなど長期間の使用に耐えるように配慮すること。
しかしながら、接続用電線と発熱素子の電極線との接続は断面積および形状の違い、ならびに接続方法から接続不良を誘発している。また、許容電流は環境温度、導体温度、電極長、PTC特性、突入電流等により補正する必要があるが、現実には上記の規定に沿わない給電線と電極線が多々見受けられ、昨今トラブルを続発している主たる原因と考えている。
また、前述の給電線の断面積は内線規程では0.75以上のものとしているが、"自主基準"第5編においては電極線の断面積に対する定義は無い。給電線と同等程度の断面積を有することがトラブル回避の重要事項と考え、電極線断面積の適正化の判断指針として以下にそれらの役割を簡単に解説した。
 
●解説
設置方法によっては対地静電容量を考慮する必要がある場合があるが、一般には発熱体は純粋な抵抗性であると考えて良く、さらに、電極線はインダクタンス成分を無視して良いとした。AC動作とDC動作で差が認められなければ、この前提は十分可能であると考えている。
そこで、図6のイラストで示したような構造を基に、
 
コードおよび蛍光灯用電線の許容電流
が得られる。
 
面状発熱体
 
★名称について;
特性長は、その逆数は減衰定数であるがここでは発熱体に給電すること、すなわち、減衰が目的であるのでこのように別称を用いた。固有インピーダンスの名称は、本来は特性抵抗と称すべきであるが特性長と紛らわしく、また、固有抵抗は別義があるので、この名称とした。これらは発熱素子の構造、材質などから定まるパラメータである。ℓは図6に示すように面状発熱体の長さであり、単位は[m]である。(6)と(7)より入力インピーダンスziは、

 
以上、電圧、電流は固有インピーダンスR0と、特性長λおよび素子長ℓの関数となっている。
素子長ℓに沿っての電圧分布、電流分布を図7に、インピーダンスを図8に示す。式(13)は、ℓ/λが大きくなるとV0 /R0に近づくことを示している。
 

 

 
x=0ではℓに沿って集めた電流であることが分かる。このことは特性長が実際の発熱体の長さに比較して長いことが良い近似(換言すれば、電極線の抵抗を無視することに相当)を与えることを意味している。
電極線の設計を行うには、加熱電流を集積し、入力側に近いほどそれ以遠の加熱電流を流していることを考慮する必要がある。
 

 

 
 
3.3 加熱電力(消費電力)について
電極線の抵抗による電圧降下により、加熱電力が部分的に変化する。消費電力は、終端から入力端までにGを通して流れる電流による電力とRによる分を集積したものであるので、入力端での電圧・電流の積は全電力となるから、

 

 
このように入力側と終端側の単位長当たりの加熱電力は特性長に深く関っていることが理解される。この関係を図11に示した。
 
この図から例えばλ=30m、ℓ(素子長)=5mとすると、入力端との比は約97%である。長さが10mとすれば約90%になる。
もし、特性長λと長さの比が1/10であればcoshの項は略1となり差は1%以下になることが分かる。
 

 

 
次に同じく単位長の素子の電極線の入力端と終端間の抵抗を測る(図12)。これは(Rは往復の長さに見合う分であるので)R/2と見做すことが可能と考えられる。Rは発熱体として完成されたものから測定することが望ましい。電極線の中に導電性物質が入り込んでいたり、周辺の導電体が影響したりするからである。これらによってGとRを決定し、それを式(10)に代入して、適当な長さの素子の測定値rと比較すればこれまでの表現が検証される。この際、仮定とした特性長が単位長より十分に長いか否か確認しておく必要がある。表2はそのようにして求めた結果を表したものであるが、種々の素子を対象とした為、室温で測定したものである。
 
3.5 電極線のRによる発熱について
 前述のように、電極線は入力端で最も大きな電流を流す。これによる発熱を最高でも発熱体の単位面積当たりの発熱量であるとするのが妥当である。通常はこれを無視することが出来るはずである。しかし、製造方法は多様性に富み、樹脂あるいは繊維製のフィルムへ発熱材料を蒸着、塗布(焼付け)、メッキ(あるいは可能性として溶射)することで製造されるものも出現するようになってきた。このとき、電極線も同様な工程で取り付けられる。したがって、素子自体は極めて薄く、施工上の便宜を追求したものが歓迎される傾向にある。このとき、無視できないのが電極線の分布抵抗Rによる発熱である。
この影響の評価を次のように考える。電極線のRによる発熱は入力側で最大になる。また、Gによる発熱体の発熱も電圧が最大であるから入力側で最大である。そこで、入力側で単位長あたりの両者の比較を行い、単位面積当たりの発熱電力が一致する電極線の幅をもって最低必要な面積(単位長さで代表する)とする。すなわち、面状に垂直方向の熱の放射、拡散のみを考慮し、横方向の熱伝導等は無視する。考察の対象とする素子の構造を模式的に図13に示す。幅は電極線ではd、発熱部はDとした。
 

 

 
図14は電極の放熱が発熱部の放熱条件と同一とすると、電極線の幅が素子長でどのように影響されるかを表したものである。
 

第4章 面状発熱素子の応用

面状発熱体の応用は多岐にわたる。ここでは床暖房・融雪への応用5)およびサケ仔魚の育成6)ではプラヒート(熱半導体)の高い遠赤外線放射効率を利用する特異な応用について、参考のため紹介する。
 
4.1 床暖房への応用
床暖房については18年前に設置された特別養護老人ホームにおける例である。蓄熱材との併用により、夜間8時間通電のみで必要な空間の暖房を行っていることを24時間の温度経過により示すと図15のようになる。
図から外気温0℃から20℃でも、室温は18℃から23℃であると読める。外気温の変化が20℃と大きいが、室温には殆ど影響の無いこと、潜熱蓄熱の効果が確認出来る。
また、消費電力量の推移は下降しており、PTC効果が確認出来る。
 
 
 
図16は室内垂直方向の温度分布の測定結果であり、床面近くから、天井近くまで温度はさほど変わらないことを示している。
 

 
上図は九州電力の協力により、横浜国立大学工学部建築学科 建築学教室 環境工学研究室が行った「潜熱蓄熱式床暖房システムの調査研究」7)(ヒートバンクシステム―ミサト㈱製)1987年度・1988年度)より引用。
 

 
4.2 屋根の融雪への応用
PTC特性のある面状発熱体(プラヒート)を積雪量に応じ布設量を調整し、夏の太陽熱に耐える工夫をした。1960年代後半より実施しており、北陸地方のみでも1,200軒以上の実績があり、その有効性を保持している(図17)。
 
4.3 遠赤外線放射の応用
一例として、サケ受精卵の孵化する前後の育成において低温(0℃~1℃程度)の河川水でありながら、プラヒートによる養魚池水面から2mの上面と床面からの放射(図18)により、湧水(8℃)に匹敵する育成効果(図19)が見られ、通常の積算温度による育成速度に比べ、極めて大きな効果があることが確認された。この応用は著者の観察の結果を実際に実験することになり、学術的には生物の光に対する感度の解明が必要であるが、工学的には遠赤外線の照射が有効であることを示したものと云えよう。
現在、北海道知床半島中心に約3,000万尾/年のサケ、カラフトマス等の稚魚に実施され、高い回帰率を実現している。
 
この輝かしい成果が得られたのは、(昭和58年当時)水産庁北海道さけますふ化場調査課長廣井修博0士の大英断と、関係各位の一致したご協力とが相まって実現に至ったことを、改めてここに記して深甚なる謝意を表します。
 

 

おわりに

 近年、オール電化の普及に伴い、ガス・石油を熱源とする暖房方式に対する優位性が明確になり、10年以上の遅れではあるが、電気式床暖房も目覚しい発展期に入った。その一方で、PTC効果の疑わしいものによる事故、あるいは施工し易さを求めるあまり、発熱部がフイルム状に薄くなり、高抵抗の電極線となって、結果として過熱に至る事故が多数発生しているものと考えられることは遺憾なことである。
これらを踏まえて、ここでは"自主基準"を活かすため、PTC効果(熱半導体特性)の確認方法と電気用品としての基本的条件である、給電線、電極線についての考え方を中心に執筆した。さらに、(時代の流れを想定した安全性)、(建物と同程度の耐久性)、(設備条件や家具の配置に対する適応性)、(経済的快適性)等の条件を満足することで、今後、この種素子の開発と業界の発展に大いに貢献できることを期待したい。
読者のご意見を賜れば幸甚です。
                                以上
 
1)JEF電気床暖房工業会 電気床暖房自主基準 第5編 自己過熱抑制PTC発熱素子利用施設型 電気床暖房基準 平成17年2月より引用
 
2)日本工業大学2006年度 清川 晋 博士論文「生活環境のための全面温度制御型発熱体の研究」より
引用
 
3)社団法人 日本電気協会 需要設備専門部会 電気技術規程 使用設備編 内線規程JEAC 8001-2005より引用
 
4)資源エネルギー庁 公益事業部編 平成4年4月改正 解説 電気設備の技術基準より引用  
 
5)日本電熱協会(エレクトロヒート)№141から抜粋
 
6)日本電熱協会(エレクトロヒート)№139から抜粋
 
7)九州電力株式会社、横浜国立大学工学部 建設学科 建築学教室 環境工学研究室 1988年7月 1989年7月「済昭園におけるヒートバンク・システムに関する実測調査」より引用
 
参考資料
1.経済産業省の製品安全情報 2006年11月21日
 
  注1)
2.読売新聞 2006年 11月22日
3.朝日新聞 2006年11月1日 13版
4.日刊木材新聞 2006年2月17日
5.産経新聞 2007年7月7日
6.日本経済新聞 2007年7月7日
7.産経新聞 2007年7月7日
 
 
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