断熱構造と蓄熱構造
断熱構造と蓄熱構造の違い
一年を通して温度がほとんど変化しないで快適な温度に保たれているのは望ましい恒温温度環境であろう。
井戸は水と地面の大きな熱容量によって水温が保たれているのであって断熱構造をなしているのではない。いわば理想的な蓄熱体の効果である。窓を除く建屋体が完全な断熱体で覆われている場合を想定すると窓から侵入した熱と内部で生じた熱はそのまま溜められる。
したがって生活の場としての内部は徐々に高温状態へ移行する。恒温のためには熱を運び出さなければならない。
一方理想的な蓄熱構造を想定すると内部で発生した熱や侵入した熱は蓄熱体に吸収され温度の上昇はない。熱の移動に費やすエネルギーは必要が無いことになる。蓄熱構造の優位性である。寒暖温度差の大きい季節には昼間の日光熱を蓄熱して夜間放出することで恒温空間を得ることが可能となる。
蓄熱構造に必要な特性
効果的な蓄熱構造として限られた容積でこれを実現しようと潜熱蓄熱材が使われてきた。
材料の例として硫酸ナトリウムの水和物などに融点調整剤により固体⇔液体の相変化の温度を調整する。耐久性を保つために相分離防止剤さらには過冷却防止剤等を加えるのが普通である。
この種無機水和物の他に有機物蓄熱材料としてパラフィンが使われている。これらをポリプロピレンなどの容器に封入して利用に便利な形状にしている。
無機水和物蓄熱材には前述の硫酸ナトリウム水和物以外にも種々の水和物を用いた製品が出てきているが長期間の利用に耐える製品は少ない。
これらが実際の使用に耐えるには、相変化や温度の変化に対して体積の変化が長年にわたって一定であり、その値が過剰でないことである。
以上をまとめると、潜熱蓄熱構造体には次の特性が要求されることが分かる。
①少ない容積で必要な熱エネルギーを蓄えることができること。
②吸熱(28℃)、放熱(23℃)の温度と温度差(5℃以上)などが適当であること。
③耐久性があり劣化しないこと。
④吸熱放熱の熱交換が速やかに行われるように設計された容器に密封されていることが極めて重要であること。
⑤重量が適当であること。
⑥相変化に伴う膨張収縮が僅少であること。
蓄熱構造と断熱構造の根本的相違の実証
2008年4月から2101年3月末までの間、UR都市機構都市住宅技術研究所の主催するルネッサンス計画に東京電力と共に参画する機会を得た。
東京ひばりヶ丘団地の実験空間は同一条件の2室に蓄熱式床暖房(天井、壁面など、全面に蓄熱材を配置、面積比率約70%)と非蓄熱式床暖房を施工し、その相違を観測するものであった。
その結果のデータの一部を次に示す。
図9(a)は外気温10℃以下における温度環境の差をサーモカメラの映像から見たのもである。
蓄熱材が全面に張られている左側の部屋が蓄熱材の無い右側の部屋よりはるかに良くなっていることが認められる。
特に午後6時の映像は外部温度の低下を受け、蓄熱材の熱エネルギーが放出されることによる空間の暖かさを如実に示しており、その差は歴然としている。
しかしながら、消費電力はほぼ同じという結果であった。これは床上600の温度環境を同一温度に想定すれば、明らかに蓄熱式の床暖房の方が消費電力が少なくて済んだことが容易に推定される。
放射熱が蓄熱材から発せられており、室内の人は各方向からの暖かさを感じることが出来る環境である。放射熱を評価するPMVのような形式のセンサーが温度制御のために一般化することが望まれるところである。
図9(b)は夏の時期に空調機の使用を夜間8時間のみ運転の両室の環境の相違をサーモカメラの画像で示したものである。
日射があるため、外部から熱の流入があるが、蓄熱構造体ナサコアパネルを配置した方の左の温室は日射の影響を吸収して最高温度が抑えられ、ある程度の恒温化が実現されていることが明快に認められる。
このように蓄熱材の効果が明解に示された実施例は今後様々なそして貴重な示唆を与えてくれるものと考えている。
図9に断熱材と蓄熱材の効果の相違を冬季および夏季について示した。
冬季は蓄熱効果が一日中認められるが特に18時の室温には大きな差があるのはこの頃から外気温の低下に伴い凝固潜熱の放熱が始まり、日中より暖かくなっている。潜熱の熱エネルギーが如何に大きいかを示した結果になっている。
夏季は、エアコンを夜間8時間冷房運転を行い、日中は一切の人為操作なしの映像である。
直射日光の影響が双方の映像に現れているが明らかに断熱材のみの方が室周囲全般に大きな影響を受けている。吸熱に拠る蓄冷効果が鮮明に現れている映像である。

23℃~28℃の温度範囲での「恒温化」。23℃以下になると放熱、28℃以上で吸熱を繰り返し、直射日光等外部からの加熱を吸収し、室温を「恒温化」している。
参考資料-2
冬期間の蓄熱効果
(消費電力をほぼ同じに成る様設定し室温の差を観察した)
冬季3月25日から4月1日までの1週間外気温はほぼ5℃前後である。
蓄熱の部屋(ナサコア室205夜間8時間床暖房のみ)と断熱の部屋(断熱材のみの室207)の両室を空調機の設定は室温18℃にし、1週間の連続運転により、室内各部の温度を測定して比較資料とした。
床上60cmのところで15℃以上になっている時間を比較するとナサコア室の温度は時間積分にして3倍の違いが出ていることが見て取れる。この際消費電力はほぼ同等であったことから蓄熱材と断熱材の相違は明快であり、消費電力の大幅な節減が推定出来る。

実際には、生活熱を含む窓からの直射日光、暖房、冷房等の温度差を熱源とし、28℃を超すと吸熱、23℃以下になると放熱し、「室温を恒温化」し、更に大きな消費電力の差となり究極のエコ、CO2削減を実現する。
謝辞
本稿を執筆するにあたり、UR都市機構都市住宅技術研究所および東京電力の関係者の方々には実験データの引用等多くのご協力を戴いた。ここに記して深甚なる謝意を表します。
「コトの本質」・・・お部屋の快適温度とは?
環境に配慮した次世代省エネ基準の住宅が一般常識になりつつあります。
その住宅の特徴は「断熱性が高いこと」であり、その特徴により冷暖房のエネルギーが少なくできる、その結果「省エネルギー」になるという特徴を持っています。
しかし現実は、断熱性が良くなれば良くなるほど困ることも起きます。

特に夏期の日射の強い昼間は、窓からの入力で否応無しに室温は30度を超える時間が増えます。(所定の強制換気をしているにもかかわらず)
日射は意外に大きな
熱量(※1)を夏・冬通して地上に供給して来ています。
マンションの最上階ともなると、下階から上がってくる熱気も重なり、さらに暑い時間が続いてしまいます。
※1 太陽から発せられ地球に届く輻射熱は1平方メートル辺り600ワット時の熱量を有しています。
そこで、室内温度を一定の範囲に保持する不思議なパネル
特殊ゲル(※2)の「吸発熱特性」を利用した今までの概念にない全く新しい発想から生まれた超省エネ&エコ建材
「積極断熱ナサコアパネル」を開発、商品化に至りました。
※2 特殊ゲルについては、最後の補足説明を参照ください。
「ナサコアパネル」は28度を
吸熱のピーク(※3)とし、夏季のオーバーヒートの抑止効果を発揮します。
逆に冬季の場合は?

外壁を通じて冷却されると23度を
放熱のピーク(※4)とし、今度は同じ熱量を徐々に発熱します。
最近僅かな水分で発熱する繊維で作られた下着がバカ売れしていますが、発熱だけを見ると同じ様な現象です。
※3 吸熱のピークとは特殊ゲルが「融けながら熱を吸収」する融解温度のピークを表しています。
※4 放熱のピークとは、特殊ゲルが「固まりながら熱を発生」する凝固温度のピークを表しています。
夏冬の温度差、夜・昼の温度差、冷房の有・無しの温度差、即ちその温度差が熱源
「第三のエネルギー」として効果を発揮する特徴を有しています。
その特徴は、室温を通じて「ナサコアパネル」が加熱された時、1平方メートル当たり
400キロカロリー(※5)以上の熱量を吸熱可能な様に材質と構造を設計しています。
※5 電力と熱量の換算値は、1キロワット時=860キロカロリーです
つまり四季を通して23度~28度の温度範囲を大きな
潜熱(※6)を上手に活用して保とうとします。
融解温度と凝固温度に5度の温度差のあることも大きな特徴の一つです。
※6 潜熱とは、個体、液体、気体と変化するときに吸収・放出する熱エネルギーのことです。
健康で快適なお部屋の温度とは?
その答えは、「四季を通じ身体にやさしい23度~28度の一定温度を保ち続ける部屋」というのが本質ではないでしょうか。
夏・冬を通して冷・暖房に不足する時間帯には、安価な夜間電力
「電化上手契約」(※7)を活用し、省エネと快適性・経済性を両立させることがこのシステムの目的です。
夜間の余剰エネルギーを昼間にシフトする事(蓄熱技術)で、電力会社の供給する夜間が安価な契約を結ぶことが可能となるのです。
※7 電化上手契約(東京電力の場合)はオール電化に限定しているのではなく、蓄熱機器が1キロワット時以上あれば締結できる契約ため、ガス供給との併用も可能です。
また、スマートメーターと呼ばれる通信機能を有する次世代電力計の導入を目指す実証事業が、今年の4月から半年間行われる報道がされました。
経済産業省と大手電力会社が節約世帯に協力金を支払うことなどを柱とし、実証により新たな仮想料金プランも設定されます。
発電所に負担が掛かる時間帯に節約するほど得をし、その逆だと損をするわけで、全体として省エネを促進する効果が期待されています。
何処の家庭でも室内に観葉植物や、草花の鉢があります。
生活の中で人ひとり約100ワット発熱をしていたり、照明器具・調理・冷暖房など各種の発熱/吸熱作用があります。
植物も元気良く育ち、人と共に自然に共生出来ることが本来の快適環境ではないでしょうか?
知らずしらずの内に、その熱を「やりとりし快適な居住空間の快適温度を作りだす事を可能にするのが積極断熱材「ナサコアパネル」の特徴なのです。
特殊ゲルが融けたり、固まったりする際の吸熱・放熱特性を利用、すなわち「自然エネルギー」を利用することで、環境温度を快適に持続させるまったく新しい発想の超省エネ・エコ建材が住宅の常識になる日もそう遠くはありません。
ルネッサンス計画1 ひばりが丘団地ストック再生実証試験住棟を活用した住戸改修技術にかかる共同研究「断熱性能の向上」(共同研究者 UR都市機構研究所・ナサコア(株)・ミサト(株)・日本工業大学・東京電力(株))
- 床 面 積 :14.83平方メートル
- 天井面積:14.83平方メートル
- 壁 面 積 :43.47平方メートル
試験室の仕様
| | 205号室 | 207号室 |
| 床 | 潜熱蓄熱式床暖房 | 非蓄熱式床暖房 |
| | ナサコアボード(1.4キロワット) ※1
ナサコアパネル(12.82平方メートル) ※2 | ナサコアボード(1.4キロワット)
断熱材40ミリメートル(14.83平方メートル) |
| 天井 | ナサコアパネル(12.82平方メートル) | 断熱材40ミリメートル(14.83平方メートル) |
| 壁 | ナサコアパネル(27.00平方メートル) | 断熱材40ミリメートル(37.43平方メートル) |
※1 発熱体パネル
※2 ハニカム式蓄熱パネル
205号室は床、天井、壁の下地に断熱材40ミリメートルを取り付け
205、207号室共通事項:24時間換気0.5回/時間
試験の目的は、潜熱蓄熱材ナサコアパネルを入れた場合と入れない場合の比較
- 夏、冬の省エネ効果の確認
- 冬の夜間電力を昼にシフト出来るか
- 夏、冬を通して温熱環境がどの程度、室温の恒温化により改善出来るか
- 205号室は電化上手の契約にすると経済効果がどうなるのか
補足解説
積極断熱ナサコアパネルは、水と硫酸ナトリウムを主成分に独自の添加物を加えたゲルを注入封印し密封したパネルになります。
材料の混合法などを工夫し、28度で熱吸収、23度で発熱のピークがくるよう融点と凝固点を調整しています。
この技術を住宅の内装建材として活用することにより、温度が上がる夏季は吸熱効果(固体から液体に相変化)で温度上昇を抑え、冬季は放熱効果(液体から固体に相変化)で室温の下降を抑制する新しい概念の建材が誕生しました。
その効果は1平方メートルあたり420から430キロカロリーを蓄熱できると表現できます。
従来の断熱材は熱を通さない特性しか持ちませんが、あらゆるシーンの温度差で熱を蓄える特性(一定の温度範囲に保つ性能)が最大の特徴のパネルとなります。
パネル化にはプラスチック段ボールの技術を応用。内部に1平方メートルあたり1万5800個のピラミット状の仕切りがあり、ゲルと空気層が入れ違いになっています。
ゲルは非常に蒸発しやすく、漏らさず封止するプレス、シール技術を独自開発したことにより実現しました。
パネルは厚さが約5ミリメートルから1センチメートル程度で壁や天井に断熱材のように使えるほか、床暖房パネルと組み合わせで蓄熱式床暖房としても効果を発揮します。
ナサコアパネルとは
断熱性能の向上
この新製品は、世界的にも、新商品となるもので、常識の範囲では判断できない要素を含んでいます。
厚さが、10ミリですので、空間の利用にも貢献する要素もあります。
ナサコアパネルの特徴
ナサコアパネルの特徴は、室温を夏は28度、冬は22度に保つ積極断熱の機能を備えているので、電力消費の削減に貢献できることを、この共同研究で、実証しようとしています。
ナサコアパネルの内部構造には、化学の応用に物理の考えが加わり、新しい分野が広がります。
このパネルは面を細かく間仕切りし、1メートル四方に15,800個以上の子部屋を作り、周囲の環境温度と自由に熱交換できるように設計されています。さらに、その空間と境を接して硫酸ナトリウムを主成分とする水溶液を充填しパネル化しています。
ナサコアシステム
「PTC面状発熱体 ―安全・快適に活用するために―」
PTC(positive temperature coefficient)とは、発熱体が自己温度に反応して通電量を制御し、発熱量をコントロールする性質のことです。長年この種の暖房用発熱素子の開発、応用に携わってきた著者の経験から、床暖房用PTC面状発熱素子に求められるのは安全性、耐久性、適応性、快適性として集約されるように思われる。本冊子では、これらについて簡単に触れ、火急の問題となっている安全性に特に的を絞り説明しています。
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